あくとうぇいぶ
はらいたすの夜
カランコローン。
「うー寒い寒い」
凍えそうな体を抱いてペンションに滑り込む。
「おかえりっ!慎慈。大丈夫だった?」
そう言って早紀は肩にまで積もった雪を払ってくれた。
「うん、ありがとう。それよりもほら、レモンティー」
早紀にレモンティーを渡していると、奥から圭さんが出てきた。
「あ、慎慈君。帰ってきたんだね。それにしても外は吹雪みたいだったけど大丈夫だった?」
「ええ…まぁ、車ですし」
「そうか…でも、もう危ないから外出系の罰ゲームはもうなしにしよう」
「じゃあちょっとコート置いてから談話室に行きますね、二人は先に行ってて」
ここはペンション「ウィスール」。
忌まわしい事件があったあの日から数年が経ち、今では話しの種も出尽くされ、もう無い。
心の傷も大分癒えたのか、叔父の木村さんが気になったのかはわからないが、夏頃に早紀がウィスール行きの話しを切り出してきた。
もちろんぼくは二つ返事でOKしたが、二人の予定が合わず、先送り先送りとなって12月、ようやく漕ぎつけたのだった。
今まで乗っていたバイクも、さすがにこんな山奥に来るのには向かないので必死に免許を取ったのだった。
その甲斐もあって、普段バイクの二人乗りは恐いと言っていた早紀と一緒に来たのだった。
もちろんそのせいもあって予定が遅れたのもあったかもしれないが、バスや電車などの交通機関を使うより値段も安く抑えられたし、ぼくは満足していた。
そして昨日の夜に到着し、今日は朝からずっとスキーをして、天気予報が吹雪だと言うこともあって早めに戻ってウノで楽しんでいたのだった。
ちなみに今回の部屋も早紀とは別々。
この前の旅行の時もそうだったが、いつになったら一緒の部屋で寝れるのだろうか。

談話室のソファーに座って、一息つく。
やっぱり暖房を効かせてなかった部屋とは段違いの暖かさだ。
早紀もどこかに行っていたのか、戻ってくるとすぐにぼくの隣に座った。
今ではそうでもないが、前は早紀が隣に座っただけで、ぼくは緊張してカチンコチンになったくらいだ。
友人の西堀にはよく「わかりやすすぎ」とからかわれたものだ。
今でも何で付き合うことができたのか、とても謎だと西堀に言われたが、自分でもそう思う。

あれ?そういえば…
ふとぼくは疑問になって聞いてみた。
「圭さん、木村さんはどうしたの?」
「ああ、慎慈君が罰ゲームで買い物に行ってもらってる時に、拓也君を迎えに塾に行ったんだよ」
じゃあ木村さんには時間的にちょうどよかったのかもしれない。
ちなみに拓也君というのは、木村さんが預かっている少年で、フルネームでは太田和拓也君という。

「拓也君も明日は塾がないみたいだし、北村君も来るし楽しみだね」
「そうだね」
楽しみには違いないけど、拓也君はやんちゃすぎてたまに困ってしまう。
北村君はぼくと早紀の数少ない共通の友人。
今ではちょっと遠くに住んでいるので、中々会う機会がなかったから会うのは少し懐かしい気もする。

「ただいまー!」
迎えに行く暇もなく、拓也君が談話室に駆け込んできた。
「寒い寒いー!!」
「おお、おかえり。拓也君は勉強が終わってご機嫌のようだね。でも、上がる前に雪を落としてからにしようね」
圭さんは軽く笑いながら拓也君を捕まえて、玄関へ連れて行った。
車から玄関までのちょっとした距離でも服に雪がかかってしまうほど強い吹雪のようだ。
「それにしても、北村君遅いね」
そうポツリと早紀がつぶやいた。
「そういえば、そうだな・・・」
もうすぐ時計は9時になろうとしている。
昔の事もあってできるだけ早くに来るというのが暗黙の了解なのだが・・・
ピンポーン!
「あ、噂をすれば。来たみたいだね」
早紀は顔には出さないがほっとした様子がうかがえる。
「じゃあ、私が行ってきます」
木村さんはそう言って席を立った。
「ぼくも行きます、早紀はここで待ってて」
ぼくはそう言って木村さんを追いかけた。

「どうも夜分にすみません」
そう言って来訪者は手帳みたいなものを見せた。
「あ、釼持さんでしたか?」
「はい、最近なにやらここらへんに泥棒が現れたそうなんで一応そのために来たんです」
「あ、そうなんですか。でも、ここは男3人がいるんで大丈夫です。あとでもう1人来ますしね」
「そうなんですか。では安心ですね。戸締りはしっかりしておやすみください」
「はい、ありがとうございます」
それでは、と声をかけ、釼持さんは外に消えていった。

釼持さんが去った後、木村さんに釼持さんのことを聞いてみると、近くに住んでいる警察官の方らしい。釼持さんはこっちに来た頃から警察官としての責務からか、よくお世話になっているそうだ。
「さぁ、戻ろう。こんなところで話をしてて風邪を引いたらいけない」
そう言って戻ろうとすると・・・
ピンポーン!
サッと木村さんは覗き窓から外を見る。
「あれ?釼持さんだ」
すぐにドア開けると釼持さんが入ってきた。
「すいません、タイヤがパンクしているようなんです。予備のタイヤとかありませんかね?」
「予備のタイヤですか・・・いや、それでもこの吹雪の中、タイヤを取り替えるなんて作業をしては凍えてしまいますよ。今日は泊まっていかれてはどうです?」
「しかし、迷惑が・・・」
「ペンションと言っても今日は友人や親戚達が来ているので問題はないです。事情を話せばわかってくれますよね?」
「この吹雪の中、外に放り出すわけには行きません。せめて吹雪がやむまではペンションの中で休んでいってください」
釼持さんは少し考えてから
「では吹雪が落ち着くまでお世話になります」
ということで落ち着いた。

談話室に戻り、早紀に説明した。
北村君じゃないことに少しガッカリした様子だったが、もちろん釼持さんがペンションで休むことには反対しなかった。
「あ、慎慈君、早紀ちゃん。今、北村君から連絡があって着くのが10時ごろになっちゃうそうだ」
10時ごろか・・・今は9時ちょっとすぎだから、まだ後1時間近くあるのか・・・
それまでぼくは・・・


A:談話室に自分のノートパソコンを持ってきて電源をつけた
B:このまま早紀と会話を続けた
C:木村さんにコーヒーを頼んだ
D:拓也君がビートマニアというゲームをやっているらしいので見に行った


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